太古、その地が国として統一されていなかった頃
とある女帝が有したとされる【夢見】という力。
長きに渡り歴史から途絶えし其の記録
平成る世まで継承すーー。
(桜雪月蛍の書より『桜花継承』)
太古その地が国として統一されていなかった頃、一人の女帝がいた。
律令を整え、国の基礎を築いた皇子がいた。
そうして創られ遷された都は、やがて千年の歴史を刻むこととなるが
荒廃した貴族社会は二つの武家の台頭により終わりを告げる。
それは次なる統治者をめぐる
群雄割拠の戦国時代の始まりでもあった。
それから幾百の年を重ねた果てに、ようやく太平の世がもたらされる。
そうして初めて国中から争いが消え去ったことにより
多くの繁栄と恩恵が齎され、そんな平穏を長引かせるようにと
他国から齎されるかもしれない不穏な芽を摘むように外交を絶ちながらも
その国は、国として其の地にあり続けていた。
それでも時代は、留まることなく移り変わっていく。
突如、齎された条約に揺れた国は
攘夷派の主であった帝の崩御により次第に開国派へと傾いていき
また新たなる世を迎えることとなったーー。
時は明治、文明開花の折。
これは、ありえたかもしれない【文長八年】の
『安成の大獄』も『帝国大戦』も起こらなかった時間軸の物語。
(桜雪月蛍の書より『月許国という歴史』)